桃夭学園どきどき日誌


第4話

 ドアを開けたのは、重たそうな本を抱えた背の高い男子生徒だった。

「……ここは既に施錠されていたはずですが?」

 逃げようか隠れようか、それとも開き直ろうか、と思案する暇もなく、あなたたちは男子生徒のその冷徹な目に見つかってしまった。

「ご、ごきげんよう。直江くん」

 飛鳥井さんが気を取り直して微笑んだ。
 ……あ、この人は見覚えがある。
 男子生徒の中でただ一人、Aクラスに所属する直江智親くんだ。

「ちょ、ちょっとその、図書室に忘れ物をしまして……」

「それは、施錠後の図書室に図書委員でもないあなた方がここにいる理由としては不十分ですね」

「あ、あら……でも……」

 ……彼も確か図書委員ではなかったはずだけど。
 飛鳥井さんの目はそう問いたげだった。

「……僕は、これらの本を返却しそびれていたので、先ほど図書委員の面々に
鍵とお小言と『今日中に返却のこと』という厳命をいただいただけです」

 飛鳥井さんの視線を避けるように、目を背けて直江君は言った。

「……くす」

 隙無しに見えた優等生の彼でもそういうことがあるなんて。
 恐らく飛鳥井さんも、あなたとそんな同じ思いを抱いたのだろう。

「あの、わたくしたち書棚の影で捜し物をしていたら、図書委員の方々は気づかなかったのか、施錠して出て行かれたみたいで」

 直江君の照れた(?)様子に、少し落ち着きを取り戻したのか、飛鳥井さんは
すらすらとそう伝えた。

 直江くんはふぅ、とため息をついて返却口に本を置くとポケットから鍵を取り出した。

「言うまでもありませんが……施錠は最後に退室する人間の義務です。うっかり
忘れて、この鍵を渡した僕に恥を掻かせないよう気をつけていただきたい」

 そう言うと彼は、飛鳥井さんに鍵を手渡した。

「あなたは、転入試験時に歴代トップの成績を収めたそうですが、だからといって特別扱いはないと知っていただきたい。では失礼」

 そこはかとなく、ライバル心が垣間見えたような……。
 飛鳥井さんは、と見てみれば、ただ困ったように笑うばかりだった。

 直江くんは背を向けて歩き出した──が、ドアの前で立ち止まる。

「図書室に忘れ物があれば、委員がカウンター内の忘れ物入れに整理しているかもしれない」

「……」

「……」

 あなたと飛鳥井さんは、顔を見合わせた。

「……言うまでもありませんが独り言です」

 直江くんは去り際にもう一度そう言って、立ち去っていった。

「……助けてくれたのかしら」

 らしい、とあなたも思った。ちょっと遠まわしな気もしたけれど。



 あなたと飛鳥井さんは言われた通り、カウンター内に収納してあった「忘れ物入れ」と書かれたケースを調べはじめた。

 中は本や書類や筆記用具が雑多に積み重なっている。
 あなたたちは中身を半分ほどに分割し、手分けして調べはじめた。

「ノート、ノート、ノート……怒らないから出ておいで?」

 飛鳥井さんは精一杯の慈愛を込めて呼びかけている。
 果たしてその言葉がかのノートに届いたのか、あなたはとうとうそれらしき
ものを、忘れ物の山から見つけ出した。

「ノートさん? ノートどの? ノートさま〜、出てらして〜」

 飛鳥井さんは自分が担当している書類の束を検分するのに夢中で、あなたの
様子に気がついてはいない。

 ノートの表紙には『飛鳥井雛子』ときちんと書かれている。間違いない。

 さて。
 あなたはこのノートをどうすべきだろう?

1.ノートを見てみる

2.ノートを見ない

※選択肢の〆切は10/02(月) 0:00です。



戻る