桃夭学園どきどき日誌


第3話

 あなたは飛鳥井さんに今日一日の行動を思い出してもらうことにした。
 それをなぞることで、もしかするとまだ探していない場所も見つかるかもしれない。

「今日一日の行動? そうね……」

 あなたの問いに飛鳥井さんはうーんはてさてどうだったかしらんと首をひねりつつ、歩き出した。



 あなたたちは女子寮へと戻ってきていた。

「朝起きてかばんにノートを詰めた後でやったことといえば……女子寮の廊下がいつにもまして輝いていたから、思わず二度三度とスケートごっこなどをたしなんだくらいかしら」

 ス、スケートごっこ……?

 どうやら、あなたが思っていた以上に飛鳥井さんは腕白少女らしい。

「あら、よろしければ今からでも一緒におやりになります?」

 そ、そんな事をしている暇はないんじゃないかな? ……と、あなたは思った。

「授業中はずっと……かばんにノートをしまいっぱなしだったんだけど……」

 授業中にノートを使わずに、いつ使うのだろう。
 あなたはちょっと不思議そうな目で飛鳥井さんを見つめた。

「そ、そのノートは予習・復習用ですから、授業中は用いませんのっ」

 とすれば、授業以外の休み時間が怪しい。
 どこかノートを持って出かけることはなかったか聞いてみる。

「お昼は図書室で執筆活ど……もといっ! べ、勉学などに勤しみましたわ!」

 その時ノートはどうしたかと尋ねると、飛鳥井さんは、

「勉強が終わった後は、ちゃんとノートもしまった……はず……」

 みるみる語尾を濁していく。
 どうやら、図書室に思い当たる節があったようだ。



 ……あの、飛鳥井さん。

「しーっ。図書室ではお静かにっ」

 がらがら、がちゃん。
 こつこつ、こつこつ……こつこつ……こつ……。

 …………。
 ……。
 …。

 静寂と沈黙が十秒くらい続いただろうか。

 図書室のドアはきちんと施錠された。この部屋に残っているのは、今やあなたと飛鳥井さんの二人だけだ。

「……よし! これでもう大丈夫! 安心してノートを探せるわ!」

 飛鳥井さんがぐっと拳を握って立ち上がる。
 ……とにかく、今はノートを探そう。先生に見つかったら怒られちゃうだろうなあ、などという心配は後回しだ。



 がさごそ、がさごそ。

「う〜ん……」

 がさがさ、ごそごそ。

 あなたと飛鳥井さんは手分けして図書室の中を探してみたが、ノートらしきものはなかなか見当たらなかった。

「おっかしいなぁ……」

 テーブルや書棚の下を屈み姿勢で探し続ける。
 しかし、目当てのノートはなかなか見つからない。
 あなたは、凝り固まってきた腰をうんせと伸ばしながら思案した。

 ええと、返却口のあたりはまだ探してなかったっけ……。

「…………あの、ごめんね」

 ぽつりと、そんな呟きが耳に届いた。
 振り向くと、飛鳥井さんが机の下を覗き込みながらも神妙そうな表情を浮かべている。

「わたしの我侭に巻き込んじゃって」

 あなたは『別にいいよ』となるべく優しさを篭めて、飛鳥井さんに言った。

「でも……」

 飛鳥井さんはなおも自分を責めようとする。

 自分の気持ちを彼女に打ち明けようか、と思った矢先、図書室のドアが突然がちゃりと音を立てた。

「……!」

 そこに現れたのは――――。

1.重たそうな本を抱えた背の高い男子生徒だった

2.見回りに来たらしい理事長代行だった

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