桃夭学園どきどき日誌
第1話
「大切なものなの」
その表情は今まで見たこともないほど真剣で、
・ 『あなた』は私立桃夭学園に通う平凡な女子生徒である。 あなたは拾った猫の飼い主を捜し求めている訳でもなく、自分の将来について悩んでいる訳でもない。 勉強や体育の授業は人並みにこなしているが、部活動に打ち込んでいる訳ではない。 とはいえもちろん、悩みなき人生でもない。 でもそれは体重計の数字が最近ちょっぴり気になるとか、友達と他愛もないことで喧嘩したり仲直りしたりとか、そういう小さな悩みばっかりで。
――つまるところ。
・
お昼休み。 「今日は何にいたしましょうか?」 という彼女の言葉にぼんやりと考える。
……うーん。最近、また体重計が気になってきたし、大人しく野菜サラダだけにしておこうかな……。 「あら、何の騒ぎかしら」 友人の言葉に考え込んでいたあなたは伏せていた顔を上げた。
つい先日転校してきた生徒。 「まあ……雛子様よ」 友人は羨望のため息と共に呟きを漏らした。
飛鳥井雛子。 しかもそれだけではなく、編入試験で学園史上最高の成績を納めており、体育の授業を覗いた友人によれば、運動神経も抜群らしい。 いいなあ、とあなたは思った。 きっと彼女は毎日毎日立派なことを考えていて、自分のようにどうでもいいことではなく、きっともっと高尚な悩みを持っているんだろうな……。 そういう風に考えて、あなたはため息をついた。 「ご、ごきげんよう……」 側を通り過ぎる飛鳥井雛子に、友人がおずおずと挨拶を投げかける。 「ええ、ごきげんよう」 彼女は、太陽みたいに晴れやかな笑顔で返した。 立ち去った後、友人は「雛子様が挨拶をしてくれたー♪」と、ひたすら感激していた。
・
放課後。 とはいえ特に切迫した用件でもないため、あなたは何となくお昼休みにすれ違った飛鳥井雛子のことを考えていた。 ……彼女ならきっとこういう『うっかり』な事も無いんだろうな。忘れ物や落し物で慌てるなんて、自分のような凡人のやることなのだろう。 あなたは自分の考えに苦笑しつつ、職員室から借りてきた鍵で美術室の扉を開けようとした、が――。 ……あれ? 「……う〜……また……った……」
かすかに声が聞こえる。 あなたは―― 1.ドア越しに声をかけてみる 2.思い切ってドアを開けてみる ※選択肢の〆切は9/11(月) 0:00です。 |