桃夭学園どきどき日誌


第6話

 ――新聞部に頼ってみましょう。

 しかし秋月さんは自らの提案に、やや渋い表情を浮かべていた。

 うにゃ?

 あなたがこももと一緒に首を傾げると、彼女は咳払いの後、キリリッと両指で眉を上げた。

「何でもありません、入りましょう」

 秋月さんが新聞部のドアを開けた。

「そのスコットランド人はホットドッグ(HOTDOG)を知らなくてね、頬を赤らめながら『ねえ、パンに挟まってるこれ、犬(DOG)のどの部分?』ですって!」

「ふ、藤枝さん、後ろ後ろー!」

 同席していたもう一人の新聞部員が慌てて言った。

「……藤枝さん、校内ではしたないアメリカンジョークの解説は慎みなさい」



「ほー」

 うんうん、と頷きながら新聞部部長・藤枝あやなはこももをジロジロと見つめていた。

「で、新聞でこの猫の飼い主を募集すれば良いのかしら?」

「ええ。名前は『こもも』。見ての通り、比較的大人しく、賢い猫です。連絡先は三月三日委員会左大臣の秋月理々子までお願いします。よろしいですね?」

 最後の問いは、あなたに向けられたものだ。もちろんあなたに異論はない。

「承りました。桃夭学園新聞は面白そうなネタもとい弄りやすそうなネタもとい、公益に貢献することを旨としています」

 本音をぼろぼろ漏らしながらあやなは快諾した。

「じゃ、新聞に載せる用に写真撮りますから」

 あなたはこももを藤枝あやなに向けて差し出したが――。

「………………私が?」

 秋月さんはきょとんと自分を指さした。



「こ、こうですか?」

「もっと笑顔を作っていただけませんこと? 場末のファストフードでもスマイルは0円で提供してましてよ?」

「こ、子猫を中心に撮りなさい! 私のスマイルは必要ありません!」

 その時、退屈になったのかこももが秋月さんの首筋をそっと撫でて、可愛らしく

「にゃう」

と鳴いた。

「あ……ごめんね、もうちょっと我慢してね?」

 秋月さんがそう言いながら笑顔を浮かべた瞬間、藤枝あやなはカメラのシャッターを押していた。



 翌日。

 こももを嬉しそうに抱く秋月さんの写真と、子猫の飼い主を求める旨の記事が、桃夭学園新聞に掲載された。

 あなたが面食らうほど反応は劇的だった。
 女子生徒から『是非とも子猫を』という連絡が殺到したという。

 ……まあ、まさかその内の多くが『今なら秋月理々子もついてくる』という記事の煽りを本気にしていたとは予想外ではあったけれど。

 そして、応募者の中には意外な人の名前もあったのだった。

1.まさか、右大臣のあの人まで……

2.まさか、男子のあの人まで……

※選択肢の〆切は6/20(火) 0:00です。



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