桃夭学園どきどき日誌


第5話

 こももはどうしているだろうか

 あなたはこもものことが気に掛かっていた。
 何しろまだ小さくかよわい子猫だ。

 お腹を壊してないだろうか。
 ままーままーと夜鳴きしてないだろうか。
 ぶっちゃけ今すぐぎゅっと抱きしめたい。

 思いは巡り、あなたはとうとうベッドから下りてしまう。

 このままでは眠れないことは明らかだ。
 夜間の外出は禁じられているが、明日の授業に差し支えるくらいならいっそ、とあなたは思う。

 こももの無事を確認し、ちょっと抱っこさえすれば、あなたは安心して眠れるだろう。

 あなたは男子寮をそっと抜け出すことにした。



 裏庭にやって来たあなたは、寒さにわずかばかり身を竦ませつつ、こももを呼んでみた。

 にゃー。
 なー、にゃー、にゃぁ、にゃにゃー。
 にゃにゃにゃみゃみゃにゃー。

 ほどなくして、ぽてぽてと子猫たちがやってくる。

 しかし、その中にこももの姿は無い。
 集まってくれた子猫たちを順繰りに撫で撫でしつつ、あなたはさらにこももの名を呼んだ。

 な〜?

 聞き覚えのある声に導かれて、あなたは草むらを掻き分けてみた。

 ……いた。
 草むらで小さい体を丸めたこももが、こちらを見つめていた。

 あなたが手のひらを差し出すと、こももは嬉しそうに近寄ってぺろぺろと舐めてくれた。

 喉をくすぐると、まだちょっと下手っぴだが、ごろごろと鳴らして甘えてくる。

 どうやら元気な「あ!」ようだ…………。

「あ」?

 あなたは突然背後から聞こえた声に振り返った。
 そこには――。

 にゃん?(こもも)

 誰もいなかった。
 ただ、なぜか分からないがキャットフードの箱が地面に落ちていた。
 いつのまに落ちていたのだろう? あなたは拾い上げてみるが、中身はまだ沢山残っている。

 ……ここに残しておくわけにもいかない。あなたはキャットフードを両脇に抱えて、とりあえず男子寮へ帰還することにした。



 翌日、放課後。

「……」

 何故か、秋月さんが妙にあなたのことを睨んでくる。
 怒っているような、羨んでいるような、そんな複雑な表情が垣間見えている。

 あなたは疑問に思いつつも、こももを五味淵さんから受け取り、再び飼い主探しを開始した。



「……はあ」

 残念ながらあなたと秋月さんの努力は徒労に終わった。
 これだけ沢山の生徒がいても、今すぐに飼える人間は皆無のようだ。

「こんなに可愛いのに……」

 秋月さんが両腕に抱えたこももに向かって呟いた。

 にゃう。

 遊んでくれると思ったのか、こももは手を出して秋月さんの鼻の頭を掻いていた。

「えへへ……」

 秋月さんがへにゃりと笑う……が、隣のあなたを見て慌てて咳払いした。

「こほん! ……ともかく、こうなれば別の手段を取ろうと思います」

 首を傾げるあなたに秋月さんは続けた。

1.新聞部に頼ってみましょう

2.放送委員会に頼ってみましょう

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