桃夭学園どきどき日誌
第3話
「何をしているのですか?」 その理知的な声に、あなたは猫ともども振り向いた。 そこにいたのは、これまであなたと接点がなかった相手――三月三日委員会の左大臣、秋月理々子だった。 「もしかして……『また』でしょうか?」 五味淵さんに目を向け、少しきつい語調で秋月さんは言った。
『また』とは、あなたがその胸にしっかと抱いた子猫であることは言うまでもない
あなたは慌てて、自分が曲輪桃のそばで捨てられていたところを拾ったのだと 「事情は分かりました。ですが、どちらにせよ『また』小動物が捨てられていたことは間違いないのですね。困ったものです」
まったく、とますます声音が厳しくなった。 「にゃうん?」 子猫がこてんと小首をかしげて、そんな秋月さんを見やった。 「…………っ!」 ふにゃん、と目尻と眉が下がって優しい曲線を描── 「…………ッ!」 ――く直前、秋月さんはくるっとこちらに背を向けると、指を眉毛のそばに当てて、ぐいぐいと上へ引っ張り出した。 しばらくそうした後、咳払いしつつ秋月さんはこちらに向き直った。 「……失礼しました。五味淵さん。一つお聞きしたいのですがこの子猫が加わるとなると、そろそろ個人で世話が可能な範囲を越えてしまうのでは?」 五味淵さんはしばし黙考すると、重々しく頷いた。 「せめて手があと二、三本あればと願う」
その言葉に、あなたはうな垂れつつ秋月さんを見つめた。 「早合点しないで下さい。……この子が飼える人を探せばいいだけです」
しかし、どうやって? 「ですから。生徒の伝手で猫を欲しがっている人を探し出せばいいんです」 なるほど。早速あなたが生徒を捜しに踵を返そうとすると、 「……私も同行しましょう」 「……行くがいい、若者よ」 「にゃー」「にゃ」「にゃー」
五味淵さんと他の猫たちの声援を受けつつ、あなたは秋月さんを伴って
・ 「うーん、猫飼いたい人? ゴメンなさい、ちょっと心当たりないかなぁ」 「猫か……ママは犬が欲しいって言ってたけど」 「うちはぁ、家族全員猫アレルギーでぇ……」 秋月さんと共に猫を抱えつつ、校内を駆けずり回って会う人ごとに尋ねてみたが、結果は以上の通りだ。 強いて一つ、成果を挙げるとするならば。 「可哀相にねぇ……こももちゃん」 猫に同情した生徒の一人に、かわいい名前が授けられたことくらいだ。 「もうそろそろ門限ですね。子猫は一旦五味淵先生に預けることにしましょう」 秋月さんにキッパリとそう言われた以上、あなたも従う他ない。 「ちゃんと、あなたのご主人様を見つけてあげますからね?」 「にゃう」 すっかり懐いた子猫と離れるのは、少し心残りだった。 ところで、あなたはどちらの寮に帰るのだろう? 1.男子寮 2.女子寮 Comment ※選択肢の〆切は5/29(月) 0:00です。 |