桃夭学園どきどき日誌


第2話

 ――五味淵さんに助けてもらおう。

 桃夭学園で困ったことがあれば、三月三日委員会に相談するか……さもなくば五味淵さんに相談するべし。

『五味淵さん』とは住み込みで働いている男子寮の寮長だ。
 誰が呼んだか『箒を持った哲学者』。

 裏庭で熱心に掃除をしている姿を、あなたも何度か目撃しているはずだ。

 そう……捨て猫のことならば五味淵さんが適任だろう。
 以前にも似たようなことがあったらしいし。
(その時は男子生徒の世話がなっちゃいない、ということでたいそう説教されたそうだが)

「にゃん?」

 あなたはあなたの頬に顔をこすりつける子猫に、そこはかとないいとおしさを感じつつ、五味淵さんの居る男子寮へと向かうことにした。

 あなたはぐるぐると男子寮前を見回す。

 さっ、さっ、さっ――。

 箒の音はすれども姿は見えず。仕方なく、あなたは大声で五味淵さんを呼ぶことにした。

「……む?」

 ひょいと木の陰から五味淵さんがこちらを覗きこんだ。

 その両肩と、

「にゃー」

 その頭上には、

「にゃん」

 猫が搭載されている。

 その状態の奇妙さに言葉をかけられないでいると、五味淵さんはあなたが両手に抱きかかえていた猫に眼を留めた。

「ふむ……」

 いかめしい表情で、子猫をじっと見つめている。

 慌ててあなたは子猫を曲輪桃の下で拾ったことを説明するが、その表情はいっかな柔らぐことはない。

 捨て猫を勝手に拾ってきたことをとがめられてしまうだろうか。

 あわよくば五味淵さんに面倒を、と小狡いことを心のどこかで考えていたことを恥じる。

 五味淵さんはあなたに近寄ると、人差し指で子猫の頭をコリコリと掻いた。
 それが気持ちいいのか、子猫はにゃんと一声啼いた。

 すると五味淵さんが、めったに見せない表情を浮かべた。

 あまりに珍しい表情なので、一瞬戸惑ってしまったが、彼は微笑んでいたのだった。

「命を軽々しく扱う輩は許せないが、君にその尊さを教えたのならば、嘆くばかりでもあるまい」

 さっきのいかめしい顔は、どうやら捨てた誰かに対する怒りだったようだ。

「……この子に名前はあるのかね?」

 名前はまだない、とあなたは告げた。

「ふむ……」

 あなたと五味淵さんは二人して、猫を見つめる。

「うにゃ?」

 見つめられた子猫は、まるで照れているかのようにじたばたと空中を掻いていた。
 その愛らしい姿に思わず顔が緩む――と、その時。

1.「何をしているのですか?」理知的な少女の声がした

2.「ぶっさん、どうしたんでい?」いなせな少年の声がした。

※選択肢の〆切は5/22(月) 0:00です。



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